翻訳ソフト実践ワークショップ
第2回 辞書機能 【演習】

専門用語辞書のチェック方法

専門用語辞書にはどのような語句が登録されているか一覧表示することができません。実際に訳文を出力してみるとあまりヒットしなかったり、専門語辞書を設定したために却って誤訳になったりすることがあります。そこで、実際の仕事で使用する前にチェックする必要がでてきます。

ここでは、文系向けのコンピュータ・チュートリアルを例に取って、専門語辞書をチェックする方法を説明します。

チェックの手順

  1. 基本語辞書のみで訳文を出力する
  2. 全文書に翻訳ロックをかける(「ツール」→「スクリプト」→「全ロック」)
  3. 専門語辞書(ここではコンピュータ)を設定し、表示色を「赤」にする(辞書の設定の仕方については「辞書の設定方法」を参照してください)
  4. 基本語辞書だけで出力した文の次にセルを追加してその原文をコピー
  5. 専門語辞書を反映させて訳文を出力
  6. 専門語辞書にヒットし、赤色で出力された訳語を、基本語辞書のみの訳語と比較する
このようにして比較した結果、ざっと以下のような注意点が見つかりました。

表記のゆれ

(図1)
図1の「シェル・プログラム」は基本語辞書では「シェル」と「プログラム」を辞書引きして「・」でつないでいます。これは、翻訳設定でカタカナを「・」でつなぐ設定にしてあるからで、チェックをはずせば「・」なしにできます。専門語辞書では「・」なしの「シェルプログラム」だけが登録されており、「・」を選択することはできません。
(図2)
図2の「グラフィックインタフェース」も同様の例です。

この問題を解決するためには、正しい表記でユーザ辞書に登録することが考えれますが、けっこう手間がかかります。「・」のあるなしでユーザ辞書を切り替えるのも面倒です。
そこで、すべて完成してから「ユーザ後処理して出力」機能(スクリプト)を利用して一括置換するのも一つの方法です。

複数の訳語


(図3)

図3のように一つの見出し語に複数の訳語が登録されていることがあります。初出の訳語が気に入らない場合は手動で訳語変更する必要があります。

訳語変更すると「学習辞書」に書き込まれますが、この辞書はテキスト書き出しできないので、何を学習したかわからなくなり結局コントロールできなくなります。そこで面倒でも、決定した訳語でユーザ辞書に登録し直すのが確実です。

品詞の固定による副作用


(図4)
図4の「reading」は基本語辞書では「動名詞」と解析され「〜について読むことなく」と正しく訳されているにもかかわらず、専門語辞書では「名詞」で登録されているため解析に失敗し、「〜について読みなしで」と不自然な訳になっています。

この場合、専門辞書を使わないほうが良い結果が出ますが、この文だけ辞書をはずして出力するというのも実用的ではありません。やはり、ユーザ辞書に登録することになります。

単語か連語か

一見、連語で登録された訳語を出力しているようですが、実際は個々の単語の訳を機械的に並べている場合があります。
(図5)
図5の文番号32の「multiple documents」は形容詞+名詞で「複数の文書」と出力されていますが、文番号33では「multiple」は名詞で「倍数」と訳され「documents」は名詞)で「ドキュメント」と訳され、そのまま並べられて「倍数ドキュメント」となっており、ちょっと見ると専門用語のようですが良く見ると意味のわからない訳語になっています。

連語や熟語は迷わずユーザ辞書に登録したほうが良いでしょう。長いフレーズでもかまわずどんどん登録しましょう。

上記の項目に基づいてチェックすると、その専門辞書が翻訳作業にどの程利用できるか見えてきます。あまり使えないようであれば、本格的に「ユーザ辞書」を作らなければならないと覚悟を決めなければなりません。

細かく見ていけば、他にも問題点が見つかりそうです。いろいろと試してください。蛇足ながら、専門用語の「訳語が」正しいかどうかは、真っ先にチェックする項目です...。

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