翻訳ソフト実践ワークショップ
第3回 翻訳設定と訳文出力 【演習】

翻訳設定の実習

ここでは、翻訳設定のうち、主なものを少し詳しく見て行きます。

設定画面の開き方

設定画面を開くには...
  1. ツールバーの「設定」ボタンをクリックする
  2. 「ツール」メニューから「設定」をクリックする
  3. ショートカット・キー「Ctrl+M」を押す。
できるだけショートカット・キーを覚えましょう。

「訳出方法」の設定


●大文字を小文字にして訳す

固有名詞や、マニュアルでのコマンド名などでそのまま出力したい場合はチェックを入れません。ただし、チェックを入れなくても文頭の大文字は自動的に小文字に変換されてしまうので要注意です。

以下の例文で試してみましょう。

In addition to paragraph styles, Translator's Workbench can ignore text formatted with specific character styles during interactive or batch translation.

チェックを入れずに翻訳すると「TranslatorのWorkbench」と出力されます。

パラグラフスタイルに加えて、TranslatorのWorkbenchは、インタラクティブまたはバッチ翻訳の間、特定の字体で書式を設定されるテキストを無視することができる。

「大文字を小文字にして訳す」にチェックを入れて翻訳すると「翻訳者のワークベンチ」となります。

パラグラフスタイルに加えて、翻訳者のワークベンチは、インタラクティブまたはバッチ翻訳の間、特定の字体で書式を設定されるテキストを無視することができる。

今度は、チェックをはずして、次の文章を訳してみましょう。Translator's Workbenchが文頭に来ています。

Translator's Workbench scans the document and displays a list of its paragraph styles.

文頭のTranslator'sが「翻訳者」と訳出されてしまいました。

翻訳者のWorkbenchは、文書にざっと目を通して、そのパラグラフスタイルのリストを表示する。

もう一つ見ておきます。

Click Open Document.

「大文字を小文字にして訳す」にチェックを入れて翻訳すると「Open」まで翻訳されてしまいます。しかも形容詞として分析されています。

開いた文書をクリックしなさい。

チェックをはずして翻訳すると次のようになります。

Open Documentをクリックしなさい。


●長い文章を節・句ごとに区切って訳す

試しに次の文章を翻訳してみましょう。

The case has drawn widespread attention because of allegations that British authorities colluded with the Protestant guerrillas who shot the lawyer, Pat Finucane, in 1989.

訳出方法の設定をすべてはずして翻訳すると、以下のような訳文になりました。

英国当局が1989年の弁護士(パットフィヌーカン)を撃ったプロテスタントのゲリラと共謀したという申し立てのため、訴訟は広範囲にわたる注意をひいた。

次に、「長い文章を節・句ごとに区切って訳す」にチェックを入れて翻訳してみました。

訴訟は広範囲にわたる注意をひいた ― 英国当局が{ 1989年の弁護士(パットフィヌーカン)を撃った} プロテスタントのゲリラと共謀したという申し立てのため。

because of〜の前で分割されて訳されています。見事に訳し下ろしのスタイルになっています。
{ }はこの場合、関係代名詞の節を一括りにしています。設定なしの訳文と同じですが、括ってあるので係り受けがわかりやすくなっています。

●命令文を平叙文として訳す

もう一度、以下の例文を使います。
命令形になっていますが、操作手順の場合は平叙文で訳した方が良いかもしれません。

Click Open Document.

「命令文を平叙文として訳す」にチェックを入れて翻訳すると次のようになります。

Open Documentをクリックする。



「ですます調で訳す」と「カタカナを「・」でつなぐ」については特に取り上げませんが、適当な文章を使って試してみてください。


「訳の指定」の設定

●助動詞

一例として、以下のような契約書の文書を訳してみます。

Upon termination of this contract Bailee shall deliver to Bailor, and Bailor shall receive from Bailee, the Article at the warehouse where the Article is stored.

デフォルトのままだと、shallは「〜する」と訳されてしまい、契約書の訳としては不適切です。

この契約の終了に、受託者は寄託者に引き渡す、そして、寄託者は受託者(物品が保存される倉庫の物品)から受け取る。

そこで、助動詞:でshallを選択し、訳語を「〜ものとする」にします。「設定」ボタンをクリックして設定完了です。
再度翻訳すると以下のようになり、契約書らしくなりました。

この契約の終了に、受託者は寄託者に引き渡すものとする、そして、寄託者は受託者(物品が保存される倉庫の物品)から受け取るものとする。


「接続詞」「前置詞」についても同じように試してみてください。
訳語のところに(入力可)と書かれているものは、プルダウンメニューから選ぶだけではなく、任意の訳語を登録できます。

●冠詞・代名詞

ビジネス・レターなどの翻訳であれば、「we=弊社」「you=貴社、御社」とするといいでしょう。
コンピュータのユーザ・マニュアルの場合なら「you=ユーザー」としてもいいでしょう。

●その他

「数字」はデフォルトではそのまま半角で出力されますが、全角にしたり、漢数字にしたりできますので翻訳仕様に従って設定しましょう。

「フォントと配色」の設定

ここでは「フォント」の選択と訳文やフレーズの色を指定します。

「フォント」は日本語と欧文のフォントをそれぞれ指定できます。
「フレーズ色」はフレーズ指定したときの文字の背景色のことで、フレーズ・レベルにより4段階で設定できます。HTMLのタグの色も指定できます。(特に必要がなければそのままで良いでしょう)。

「文番号と訳文の色」では訳文の出力方式によって色分けできます。文型一致検索や類似文検索も同時に行うときはこの色分けが重要になってきます。

「その他の色」では、「翻訳しない」と「学習辞書」にデフォルトで色が設定してありますが、「翻訳しない」色と「文型一致」の色が似ていて紛らわしいので変更した方が良いかもしれません。

「その他」の設定

●設定情報

いくつかのジャンルの翻訳を処理する場合、翻訳の設定もジャンルによって切り替える必要が出てきます。
その都度、ダイアログを開いて設定して行くのは大変です。設定情報の機能を使えば、設定ダイアログの情報をファイルに保存できます。翻訳設定が完了したら、「保存」ボタンをクリックしてファイルに保存しておきましょう。「.ini」という拡張子が付きます。
また、「読み込み」ボタンをクリックすることで、保存しておいた設定情報ファイルを開くことができます。

●全ての設定をリセット

「全リセット」ボタンをクリックすることで「設定」画面で設定した情報を全て元に戻すことができます。
翻訳対象となる文書のジャンルや種類によって「翻訳の設定」は大きく異なってきます。
色々と試してみることをお勧めします。

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