「eとらんす」2004年12月号(P66〜P67)掲載

翻訳ソフト・試用レポート

PC-Transer 翻訳スタジオ

MT研究会 小室誠一 (http://www.babel.co.jp/mtsg/)

10月8日、業務用翻訳ソフトとして定評のあるPC-Transerの新バージョンが発売されました。今回でV12となりますが、従来とは大幅にインターフェースが変更され、名前も「PC-Transer 翻訳スタジオ」となりました。さて、どのように変わったのか、早速試してみましょう。

  PC-Transer 翻訳スタジオ 製品紹介ページ
http://www.transer.com/products/pc_transer/

■インターフェースの変更

 今回からインターフェースが大幅に変わりました。これまでは、多機能な割には大変シンプルな画面でしたが、翻訳画面、辞書画面、訳語画面、対訳メモリ画面が1つの画面に表示され、一目で主な機能が分かるようになりました。各画面はペインと呼ばれ、必要に応じて移動したり非表示にできます。
  PC-Transerは1999年末のV6で本格的な対訳データベース(翻訳メモリ)を搭載し、大きく飛躍しましたが、その後もいろいろな機能を付加しながらバージョンアップを重ねてきました。ただ、それらの機能の中には、一部のパワーユーザにしか使われないものや、あまり実用的でないものもあったことは事実です。今回、これまでの機能を見直して不要なものを省き、メニューのカテゴリを整理した結果、どのユーザにも使いやすいようになったように思われます。

 それでは、「マルチペイン・エディタ」画面を見てみましょう(図1)

[図1]マルチペイン・エディタ画面

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このようにすべてのペインが表示されていてもそれほど窮屈な感じはしません。もともと従来の対訳画面はデフォルトでは小さめに表示されていたので、この大きさであれば違和感がないでしょう。これまでは、新規作成する度に新しく対訳画面が開くようになっていましたが、このバージョンではタブで画面を切り替えるようになっています。複数の文書を翻訳する場合に作業しやすくなりました。さらに、英日翻訳と日英翻訳がタブをクリックするだけで切り替わるので便利です。また、任意の単語をダブルクリックすると原文と訳文が反転表示される訳語対応機能は健在ですが、訳語変更と品詞変更の操作が少し変更されています。
  右上には参照用の辞書ペイン、右下は訳語ペインがあり、対訳画面で単語をダブルクリックすると連動して訳語が表示されます。訳語変更は、従来どおり対訳画面でもう一度クリックするとポップアップ表示される訳語一覧から選択することもできますが、訳語ペインでも選択できます。品詞変更は訳語ペインの「品詞」タブをクリックして選択するようになりました。ただ、対訳画面で右クリックし、ポップアップ表示されるメニューから品詞変更を選ぶこともできます。
  従来は翻訳メモリ画面が別ウィンドウに表示されたので、対訳画面とうまく並ぶように工夫して使っていましたが、このように最初から組み込まれていれば起動するたびに画面の位置を微調整する必要がありません。さらに、「カレント文の選択」アイコンをクリックすると、カーソル位置のセンテンスが「翻訳メモリ」ペインの原文および訳文欄にコピーされるのですぐに翻訳メモリの検索を行うことができます。そこで訳文を完成したら、クリック一つで対訳画面のセンテンスと置き換えることもできます。

 ざっと「マルチペイン・エディタ」画面を見てみましたが、画面の表示・非表示、最大化・最小化、本体からの切り離しなどが思ったより柔軟にできるので、簡単に自分のスタイルに合わせることができます。

■メニューの変更

 さて、今回はこれまでになくメニューの大幅な整理が行われているので、参考までに主な変更箇所を挙げてみます。

[ファイル]メニュー

[名前を付けて保存]が変更になりました。従来は、Transer形式で保存する場合は[名前を付けて保存]、テキスト形式での保存は[テキスト出力]で、慣れるまで間違いやすかったのですが、新バージョンでは大変分かりやすくなりました。また、対訳テキスト形式での保存にカンマ区切り(CSV)形式が追加されました。さらに、カンマ区切り(CSV)形式のファイルを開くこともできるようになっています。
[ページ設定]が新設されました。従来「印刷」で表示された、対訳、原文、訳文などの印刷種類やヘッダ/フッタ、余白、フォントなどの設定をここで行います。
[カーソル位置に挿入]は従来の[テキスト挿入]です。ファイルの種類にCSVが追加されただけで機能は同じです。

[編集]メニュー

[未知語検索]がここに来ました。今回から編集モードが姿を消したので[画面モードの変更]もなくなっています。

[表示]メニュー

新設メニューです。ツールバーやプログレスバー、各ペインの表示・非表示を設定できます。

[翻訳]メニュー

[一文翻訳]が[翻訳]に名称変更。[カレント文以降を翻訳]は、カーソルのある位置から翻訳を始めます。[すべて翻訳]は、文書の最初の行に戻って翻訳を開始します。従来は[属性]メニューにあった[翻訳ロック]がここに移動しました。[ファイル翻訳]は従来の[ツール]メニューにあった[連続ファイル翻訳]と同じです。

[フレーズ/語]メニュー

[単語][属性]メニューがなくなり、新設の[フレーズ/語]メニューに[フレーズ指定]や[フレーズ種別]など、そして[訳語変更]や[品詞変更]などがまとめられています。

[翻訳メモリ]メニュー

この新設されたメニューに、翻訳メモリ関連の機能がまとめられています。[カレント文の選択]を選択すると対訳エディタ上のカーソルのある文が「翻訳メモリ」ペインにコピーされます。

[翻訳辞書]メニュー

従来[単語]メニューにあった[辞書参照][辞書登録]がこの新メニューに移動しました。また、[ツール]メニューにあった[辞書一括登録]や[辞書→ソース変換]も、[一括登録][辞書ソース出力]と名前を変えてここに来ています。

[ツール]メニュー

[英文チェック][未知語リスト出力][頻度リスト出力]はそのままですが、[構文解析]がここに移動し、[スクリプト][訳語挿入辞書の設定][専門語辞書自動選択]がなくなりました。[設定]は、ほぼ従来どおりですが、辞書の設定が大変分かりやすくなりました(図2)。辞書を選択して「追加」または「削除」ボタンをクリックするだけで設定できます。

[ウインドウ]メニュー

この新設されたメニューでは、対訳エディタ画面の表示方法を設定できます。

[図2]辞書設定画面

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 最後にいくつか気づいたことを挙げておきます。従来のバージョンと比べて起動するまで少し時間がかるようです。これまでPC-Transerの軽快な動きに慣れ親しんでいたので特にそう感じるのかもしれません。また、辞書ペインでは「外部辞書」の検索が出来るようになっていますが、対訳エディタとシンクロしておらす、検索ボックスに単語を入力するかコピー・アンド・ペーストしなくてはなりません。外部辞書はロボワードと連携しており、設定すればEPWINGやシステムソフトの辞書も使用でき、利用価値が高いので残念です。
  いくつか気になる点はあるものの、今回のバージョンアップでは、従来の使い勝手をそのまま保持しながら、ユーザの好みに合わせた作業環境が柔軟にカスタマイズできるという目的をほぼ達成しているようです。ここでは触れませんでしたが、専門辞書の強化やアドイン機能なども考え合わせると、一段と充実した翻訳ソフトになったと言えるでしょう。

追加情報:(2004年11月4日加筆)

●「スクリプト」機能化なくなったので、当然その中の「原文・訳文読込」もなくなりました。事前に過去に翻訳したものを原文と突き合わせて対訳ファイルを作成するのに便利な機能でしたが、今回、CSV形式に対応したので、EXCELなどで対訳ファイルを作成してPC-Transerにインポートすると良いでしょう。
●OFFICEのアドイン機能が改良されていますが、翻訳に反映されるのは辞書の情報のみです。翻訳メモリ(対訳データベース)は残念ながら反映されません。次回のアージョンアップに期待しましょう。

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