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「第6回 英文の契約書・法律条文を読む」

石田佳治
(バベル翻訳大学院(USA) ディーン


石田佳治   <質問>

英文の契約書・法律条文をどのように勉強して行ったら良いでしょうか


お答えします。

英日・日英の契約書・法律翻訳を学ぶに際してまず日本文の契約文や法律文を読むことが上達のために効率的であることは前回述べました。次は英文をどう学ぶかです。

1.英文の契約書・法律文

英文においても契約書や法律の条文は独特のきまりで書かれています。法律文における英文のパンクチェーションは一般の文芸作品の英文や新聞・雑誌の英文とは違います。英文の契約書や法律の条文の中の接続詞や条件文は一般の英文のものとは違います。

英日翻訳においてソース言語として英文を読むにしても、日英翻訳においてターゲット言語として英文を書くにしても、英文の契約書や法律の条文を多く読みそれら契約や法律の条文の型に慣れておくことが大切です。契約書や法律の条文は多くの法律家がチェックしてできあがるものですから、自ずと型が似てくるものです。

2.英文契約書をウェブ上で読む   

英文契約書のサンプルは、いろいろな種類の契約書がウェブ上にたくさんあります。アグリーメント・サンプルやアグリーメント・テンプレートとしてインターネット検索をしますとたくさんのサイトが出て来ます。多くはリーガルフォームとして契約書以外の法的書類の書式と一緒にウェブサイトに載っていますが契約書の内容別に整理されていて必要な契約書の書式を選択できるようになっていますから興味のある契約書を引いて見られると良いと思います。

著名な英文書式のウェブ欄には次のようなものがあります。中には実際に使われた≪実名の企業が登場する)契約書が集められているサイトもありますから興味深いでしょう。(SEC上場会社は実際に締結した契約書をSECに登録する義務がありますからこれを集めたリンクリック社のサイトがあります。下記参照)

Sample Agreements and Legal Forms
サンプル英文契約書・英文法律書式

http://www.alllaw.com/forms
オールロー・コム社のリーガルポータルサイトで契約書や法律書式を掲示

http://corporate.findlaw.com/contracts/
ファインドロー社のサイトで契約書をタイプ別に表示

http://www.lectlaw.com/formb.htm
レクトリック・ローライブラリーのサイトでビジネス・一般の契約書式を掲示

http://www.allaboutlaw.com/
オールアバウト・ロー社のサイトで2000以上のリーガル書式を表示

http://www.ilrg.com/forms/
リーガルリサーチグループ・インスチチュートのサイトでビジネス・リーガル書式を2000以上表示

http://resources.lawinfo.com/letters/
ローインフォー社のサイトでビジネス・リーガルの書式を表示

http://www.onecle.com/
ワンクリック社のサイトで米SEC登録の契約書を含んで大量の契約書を表示

http://freelegalforms.net/
フリーリーガルフォームのライブラリーで1000以上の書式を表示

http://contracts.onecle.com/
ワンクル社のビジネスコントラクトの書式

http://www.rocketlawyer.com/legal-documents-forms.rl
ロケットロイヤー社のサイトでリーガルフォームとドキュメントを表示

http://www.vakilno1.com/froms_html/agreement.html
ヴァキNo1社のサイトで契約書と法律書式を表示

http://www.entrepreneur.com/formnet/legalforms.html
アントレプレナー社のサイトで各種の契約書式を表示

http://bestcourtreportingdegree.com/2009/50-free-sources-for-dowloadable-legal-templates-documents/
フリーでリーガルテンプレートとドキュメントをダウンロードできる50のウェブサイトを表示
(※インターネットエクスポローラーでご覧になれない場合は、グーグルクロームのブラウザーをお試しください)

http://www.businessnation.com/library/forms/
ビジネスネーション社のサイトでアメリカの50州の州ごとのリーガル書式を表示

3.英文の法律を読んで見る

前回、日本語の契約書とともに日本語の条例や法律を読むウェブサイトを紹介しましたが、英文の法律も読んでみられることをお勧めします。下記にアメリカ合衆国憲法や州憲法、州の法律や市の条例(シティオーディナンス)のウェブサイトを掲げましたので検索して読んでみられるとよいでしょう。   

英文の法律のウェブの例

http://www.usconstitution.net/const.html
合衆国憲法のサイト。ほかにもいくつもある。

http://law.justia.com/codes/new-york/2006/constitution/
ニューヨーク州憲法のサイト。

http://www.leginfo.ca.gov/const-toc.html
カリフォルニア州憲法のサイト

http://hawaii.gov/lrb/con/
ハワイ州憲法のサイト

http://www.supportcourt.com/california_family_law_code.htm
カィフォルニア州家族法(ファミリーコード)のサイト

http://www.leginfo.ca.gov/.html/com_table_of_contents.html
カリフォルニア州商法典(コマーシャルコード)のサイト

http://law.justia.com/codes/california/2009/civ.html
カリフォルニア州民法典(シビルコード)のサイト

http://www.californiaprobatecode.net/probate-codes/
カリフォルニア州プロベートコード(検認法)のサイト

http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/calawquery?codesection=pen&codebody=&hits=20
カリフォルニア州ペナルコード(刑法典)のサイト

http://www.leginfo.ca.gov/cgi-bin/calawquery?codesection=edc&codebody=&hits=20
カリフォルニア州エデュケーションコードのサイト

http://www1.honolulu.gov/council/ocs/roh/
ホノルル市のリバイスドオーディナンスのウェブサイト

4.英文の契約書文や法律文の書き方の説明について

前回、日本文の法律用語・法律例用語の書き方についてウェブ上で説明しているサイトをご紹介しました。英文の契約書文や法律文の書き方について解説したものはあるでしょうか。

英文契約書の条文起草をリーガル・ドラフティングと言い英文の法律条文の起草のことをレジスレイティブ・ドラフティングと言います。ロースクールの科目になっていますし、ロイヤーの生涯教育の科目として弁護士会などで教えられています。

これらの条文起草とは別に法律文書の書き方の科目があり、リーガル・ライティングと呼ばれています。訴状や答弁書、事案摘要書など裁判所に提出する文書を書く実務科目です。

これらリーガル・ドラフティングやリーガル・ライティングに関しては数多くの本が出版されておりその本は下記のウェブサイトを検索するとわかります。

Books on Drafting Contracts and Writing Legal Instruments
英文契約書・法律文書の書き方の関する英文書籍

http://law.lib.buffalo.edu/PDFs/Drafting.pdf
リーガル・ドラフティングに関する英文書籍のライブラリー

http://law.lib.buffalo.edu/PDFs/LegalWriting.pdf
リーガル・ライティングに関する英文書籍のライブラリー

残念ながらこれらの本の「内容」をウェブ上で公開したサイトはありません。日本語の場合は法律用語・法令用語の書き方のウェブサイトがありましたが、英語ではないのです。英文の契約文書や法律においてどのようにパンクチュエーションを使うか、接続詞を使うか、権利義務をどのように表現するか等については、上述のサイトにある本を読むしかないのです。

一つだけ日本人向けにリーガル・ドラフティングについて書かれた本があります。英文契約書におけるshall やmayなどの助動詞の使い方、and やorなど接続詞の使い方、条件文の書き方、その他英文の法律用語を説明した本です。下記のウェブサイトで内容を読むことができます。   

http://www.egaiasyoten.com/shopdetail/017000000002/order/
バベルプレス出版の「リーガル・ドラフティング完全マニュアル」の目次及び立ち  読み版

この連載の前回で日本語契約や法律の条文の読み方書き方を、今回では英文契約や法律の条文の読み方書き方を説明しました。契約書や法律の翻訳はソース言語に書かれていることを法律的に正しく読み取り、これをターゲット言語において法律的に正しい文で書くということですから、前回と今回で述べた法律文を正しく読み書く技術は絶対に必要なものです。そしてそのような技術はたくさんの例文を読んで自然に身についてくるものです。幸いにウェブ上にたくさんの利用できるサイトがありますから上手に利用すると良いと思います。


  (The Professional Translator 11月25日号より)
 

<プロフィール> 石田佳治
バベル翻訳大学院(USA)ディーン。 神戸大学法学部卒業、ワシントン州立大学ロースクール・サマーセッション、ウイスコンシン大学ロースクール・サマープログラム、サンタクララ大学ロースクール・サマープログラム修了。主要分野は国際法務・アメリカ法。 商社法務部長(蝶理)、スイス系外資企業(ロシュ、ジボダン・ルール)法務部長など一貫して法務畑を歩んだ国際法務専門職で内外のロイヤーに知己が多い。 著書に「リーガルドラフテイング完全マニュアル」「欧米ビジネスロー最前線」「シネマdeロー」などがある。