MT研究会 小室誠一 (http://www.babel.co.jp/mtsg/)
WordFast公式サイト → http://www.wordfast.net/
プログラム本体は英語ですが、日本語版のマニュアルが用意されています。
WordFastのプログラムはMicrosoft Wordのテンプレートファイル「wordfast.dot」として提供されます。ファイルサイズはわずか1.42MBです。インストールはWordを起動し「ファイル」→「開く」でwordfast.dotを開いて[Install Wordfast]ボタンをダブルクリックするだけです。
ただし、プログラムがWordのマクロで組まれているので、そのままだと警告が出てファイルが正しく開けないことがあります。その場合、セキュリティレベルを下げる必要があります。
(1)「ツール」→「マクロ」→「セキュリティ」をクリックして「セキュリティ」画面を開く。
(2)「セキュリティ レベル」のタブをクリックし、「低」にチェックを入れる。
B「信頼できる発行元」のタブをクリックし、「組み込み済みのアドインとテンプレートをすべて信頼する」と「Visual Basic プロジェクトへのアクセスを信頼する」の両方にチェックを入れる。
この点に注意すれば問題なくインストールできるはずです。wordfast.dotがWordのStartupフォルダにコピーされ、Wordを起動するとWordFastのプログラムが読み込まれるようになります。レジストリを使っていないので、アンインストールはこのファイルを削除するだけです。
英→日翻訳用に最低限の設定をして、とりあえず使える状態にしましょう。
Wordのツールバーに追加されたWordFastのアイコンをクリックするとツールボタンが右側に拡張します(図1)。右端のボタンをクリックするとセットアップ画面が開きます。
[図1] WordFastのアイコンをクリックしてツールバーを拡張する
先ずは翻訳メモリ(TM)を作成します。
(1)「Translation Memory」タブをクリックし、さらに「TM」タブをクリックする(図2)。
(2)[New TM]ボタンをクリックするとsource languageを聞いてくるので、英語(米国)を表す「EN-US」と入力して[OK]をクリックする。
(3)今度はtarget languageの画面が開くので日本語を表す「JA-01」と入力して[OK]をクリックする。
(4)作成されたTMの文書が表示されるので[OK]をクリックして「名前を付けて保存」する。
この時注意しなければならないのは、「ファイルの種類」を「書式なし(*.txt)」にすることと、エンコードを「Unicode」にすることです。
(5)設定画面の右上の×をクリックすると「wordfast.iniに設定を保存しますか」と聞いて来るので[OK]する。
[図2] WordFastの設定画面
次に用語集を設定します。
(1)Wordの「新規作成」をクリックする。
(2)ダミーの用語をいくつか入力する。形式は、英語<タブ>日本語<改行> です。
(3)「名前を付けて保存」で、任意の名前を付けて、「書式なし(*.txt)」「Unicode」で保存する。
(4)WordFastの設定画面を開いて、「Terminology」タブそして「Glossary 1」タブをクリックする。
(5)[Select Glossary]ボタンをクリックして、作成した用語集を選択する。
ついでに「Use for QC verification」と「Use fuzzy terminology recognition」にチェックを入れておきましょう。さらに「Other」タブをクリックして「Search TM for expressions」と「Search contents in all sibling translation memories」にもチェックを入れます。
以上で最低限の設定ができましたが、Wordのアドインとしてメニューに表示される翻訳エンジンなら連携できるということなので、PC-Transer翻訳スタジオUを設定してみましょう。
先ず、PC-Transerのアドイン設定を変更します。
(1)Wordメニューバーの「翻訳」→「アドイン設定」をクリックする。
(2)「基本設定」タブを表示して、「翻訳結果の出力先」の「原文ウィンドウに表示する」にチェックを入れる。「翻訳結果の出力方法」の「原文と翻訳文を両方表示する」のチェックをはずす。「フィールドコード/計算式」の「翻訳しない」にチェックを入れる(図3)。
(3)「翻訳エンジン」タブを表示して翻訳エンジンを選択する。ここでは「英語−日本語 PC-Transer 翻訳StudioU」のみ選択します。
[図3] PC-Transer翻訳スタジオUのアドイン設定画面
次に、WordFastに登録するメニュー名を確認しておきます。「翻訳」→「選択範囲翻訳」となっていることがわかります。
WordFastの設定画面を開きます
(1)「Translation memory」タブ「MT」タブとクリックする。
(2)「Menu, sub-menu for MT:」にチェックを入れ、テキストボックスに「メニュ―名,サブメニュー名」つまり「翻訳,選択範囲翻訳」と入力する。
(3)「Test」をクリックして「OK」が表示されれば設定完了(図4)。
これで翻訳時に翻訳メモリにマッチするデータがない場合、翻訳ソフトの訳文を自動的に取り込んでくれるはずです。
[図4] WordFastのMT連携設定画面
早速、翻訳してみましょう。WordFastボタンをクリックしてツール・バーを展開し、Wordで任意の英文を開きます。基本設定さえしてあれば準備はこれだけです。
左端の[Start translation]ボタンをクリックするとセグメントが切り出されて訳文入力ボックスが開きます。このとき同時に翻訳メモリの検索が行われ、完全マッチ文があれば訳文が貼り込まれます。翻訳メモリにマッチするものがない場合、自動的に翻訳エンジンで処理されて訳文が貼り付けられます(図5)。
[図5] Word上で翻訳作業を行う
訳文に修正を入れて完成したら[Start translation]ボタンをクリックします。このタイミングで対訳が翻訳メモリに書き込まれ、次のセグメントが翻訳可能状態になります。
翻訳ソフトの訳文にはPC-Transer本体の設定が反映されるので、必要に応じて翻訳や辞書の設定を変えてみましょう。
ファジーマッチの訳文が貼り込まれた場合は「Display Translation memory」で翻訳メモリを表示すると、異なる部分がマーカー表示されるので確認して修正します。また、「Context search」を使うと検索語を含む対訳が一覧表示されます。マッチする翻訳メモリがない場合に有効な機能です。
翻訳が完了したらWordFast設定画面の「Tools」タブ「Clean-up」ボタンで、訳文以外の文字を削除して完成させます。
品質チェック(QC)機能を使うと、訳文を確定し次のセグメントに移る時点で、用語や翻訳しない語句などのチェックがなされ、問題がある場合にはメッセージが表示されます。
品質チェック機能を使用するにはWordFast設定画面の「Setup」タブ「QC」タブをクリックして「Enable the following QC options during translation」にチェックを入れた上で、必要な項目を選択します。
WordFastだけでも数多くの機能がありますが、さらにアドインのPlus Toolsが用意されていて無料で使用できます。このツールにはAlign機能があり、原文と訳文のファイルから対訳の翻訳メモリを自動的に作成できます。
WordFastとPC-Transer翻訳スタジオUの連携を中心にWordFastを試してみましたが、大変スムーズに動作しました。翻訳メモリ・ツールは、メモリが蓄積されるまではなかなか効率が上がりませんが、十分に辞書の調整をした翻訳ソフトと連携することで快適に作業できそうです。PC-Transer翻訳スタジオUにも高機能な翻訳メモリ機能が付いていますが、Word文書を扱う翻訳の場合、今回試した作業環境も有効だと思われます。 |