■第1回 多段階翻訳処理で作業効率を劇的に向上させよう

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第1回 多段階翻訳処理で作業効率を劇的に向上させよう

 
現在、翻訳作業を支援する主なツールとしては、対訳データベースの検索を中心機能とする翻訳メモリ(TM)ソフトと機械翻訳(MT)による訳文の自動生成を中心機能とする翻訳ソフトがあるのはご存じの通りです。
 
★翻訳メモリソフトは対訳データがなければ人間が一から訳文を作成しなければならない。
★極端に定型化した文書でない限り、翻訳メモリの完全一致は期待できない。
◎ただし、改訂版の翻訳などでは、用語や文体の統一のために翻訳メモリツールを使わざるを得ない。
 
★翻訳ソフト(機械翻訳)では、基本的に直訳で、不適切な訳文になることがあるのでリライトが必須。
★翻訳ソフトでは、何度も同じような修正を繰り返さなくてはならないので手間がかかる。
◎ただし、翻訳ソフトでは専門語辞書やユーザー辞書を反映させた訳文を自動生成できる。
 
このように翻訳メモリソフトと翻訳ソフトには一長一短があります。どちらを使ったら効果的かとよく聞かれますが、どちらか一方ではなくTMとMTを組み合わせて使うことが必要だというのが筆者の答えです。ただし、わざわざソフトを2つ導入しなくても、PC-Transer 翻訳スタジオがあれば両方の機能をカバーできます。

●PC-Transer 翻訳スタジオの翻訳メモリ機能

 
PC-Transer に翻訳メモリ機能が搭載されてから翻訳支援ツールは大きく変わりました。対訳データが登録できるようになって、訳文の修正は一度で済むようになりました。さらに、定型文の変動要素にタグ付けすると、その部分を自動翻訳し、定型文のタグの位置に埋め込んで出力する機能もあるため、対訳データがさらに活用できるようになったのです。
 
何と言ってもPC-Transer 翻訳スタジオが素晴らしいのは、TMとMTをシームレスに連動できることです。
 
つまり、原文を読み込んで「翻訳」ボタンをクリックするだけで、以下の作業を自動でしてくれます。
 

  1. 翻訳メモリを検索して、完全一致文があれば訳文を出力
  2. 翻訳メモリを検索して、文型一致文があれば変動部分を機械翻訳した上でタグ部分に埋め込んで訳文を出力
  3. 翻訳メモリにマッチしない場合は自動的に機械翻訳エンジンで訳文を生成(専門語辞書、ユーザー辞書を反映)

 
このように必ず訳文が出力されます。しかも、どの段階で生成された訳文なのか、色分けされるので一目で分かります。
 
上記のようにTMとMTをシームレスに連動して訳文を生成する方式を、筆者は「多段階翻訳処理」と呼んでいます。

●人間の翻訳と同じ作業手順で

 
ツールを使う場合、できるだけ従来の作業手順に則していた方が馴染みやすいものです。
 
この多段階翻訳処理はまさに従来の作業手順そのままです。
 

  1. 旧版の原稿と照らし合わせて、全く同じ部分はそのまま再利用する
  2. 一部分が変更になった文は、旧版の文体を参考にして訳を追加する
  3. まったく新しい文は支給された用語集などを参照して自力で翻訳する

 
この一連の作業を翻訳ソフトが高速に自動処理してくれます。
 
その結果、翻訳のスピードアップだけでなく、時間に余裕ができるので、調査や推敲が十分にでき、訳文の品質向上につながります。

●多段階翻訳処理のステップ

 
ツールを使って翻訳する場合に最も大切なのは、段階を追って作業を進めることです。
どのようなステップがあるかおもな項目を挙げてみます。
 
【1】準備(対訳文ファイル、辞書ファイルを迅速に作成します)
  (1)素材収集
  (2)素材整形
  (3)素材インポート
 
【2】訳文生成(できるだけ完成度の高い訳文を作成します)
  (1)完全一致文検索置換
  (2)文型一致文検索置換
  (3)機械翻訳
 
【3】訳文修正(機械翻訳では3段階の編集を適切に行うことが大切です)
  (1)前編集
  (2)中間編集
  (3)後編集
 
「多段階翻訳処理」を効果的に行うためには特に事前準備が必要です。準備を十分に行わずに訳文生成してもまともな訳文にならないことが多いからです。最初に適切な翻訳メモリとユーザー辞書を作成しておけば、訳文生成だけでなく訳文チェックにも役立ちます。
 


このように訳文の出力は翻訳ソフトがやってくれるので、翻訳者は翻訳そのものというより訳文修正作業を主に行うことになります。つまり、これまでより一段レベルの高い作業に専念できることになります。ですから、翻訳ソフトを使ったら訳文の質が悪くなるということはあり得ないはずなのです。
それでは、次回から具体的にそれぞれのステップを見ていきましょう。

【多段階翻訳処理とは】


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一) 

最終更新時間:2012年06月26日 15時43分32秒