■第12回 翻訳ソフト活用トレーニング法(まとめ)

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>>翻訳生産性向上のテクニック

第12回 翻訳ソフト活用トレーニング法(まとめ)

 
筆者は、オンラインの翻訳大学院で「英日翻訳ソフト基礎演習」と「翻訳支援ソフト徹底活用講座」を担当しています。基礎演習講座では「明解翻訳」を使って翻訳ソフトを利用した訳文の作り方を、徹底活用講座では「PC-Transer翻訳スタジオ」を使って翻訳メモリと翻訳ソフトを総合的に活用するテクニックを教えており、これまでに合わせて100名以上が受講しています。
 
翻訳ソフトは大変便利で十分に役に立つという受講生がいる半面、うまく使いこなせずに脱落してしまう人もいます。それでも約8割近くはそれなりの成績で修了しています。
 
講座の中で特に重要視しているのは、ユーザー辞書の登録と中間編集です。受講生は一定レベルの翻訳力があるので、訳文を自力で作成するのは得意ですが、翻訳ソフトの一次出力をそのまま書き直すのでは生産効率は向上しません。また、不適切な一次出力文に引きずられてぎこちない訳文になったり誤訳になったりすることもあります。ですから、辞書登録→中間編集→後編集という作業工程が不可欠なのです。
 
たいていの人は1〜2ヶ月間トレーニングをすることで、適切なプロセスに沿った翻訳ができるようになりますが、文法力が弱く、感覚的に訳すクセのついている人は翻訳ソフトに馴染めないようです。それが全体の約2割ということになります。

  =「英日翻訳ソフト基礎演習」講義室=
 

翻訳ソフトで訳文を作成するということ

 
翻訳ソフトの利用範囲は大変広く、色々な使い方ができます。
例えば、自分には全くわからない言語で書かれた文章の大体の意味を知りたいときを想像してみれば、その便利さが分かるでしょう。
 
次に、プロの翻訳者ではない人が、必要に迫られて翻訳しなければならなくなったときに、「意味が分かる程度の訳文」を作成するために使用する場合があります。
 
そして、プロの翻訳者が商品としての訳文を作成する場合です。ただし、この層には翻訳ソフトを忌み嫌う人が今でも数多くいます。翻訳ソフトを使うと読解力が落ちるとか訳文がぎこちなくなるという理由が多いのですが、その昔、ワープロが普及し始めたときに、ワープロを使うとまともな文章が書けなくなるといって手書きにこだわった人とそれほど変わらないように思えます。
 
確かに、翻訳ソフトは自動的に訳文を出力してくれるものの、少しでも気を抜くと低レベルの訳文が最終段階まで修正されずに通ってしまう恐れがあることは否めません。そのような事態を防ぐために、20年にわたって蓄積したノウハウの一部がこれまでに紹介したトレーニング方法です。
 
くどいようですがトレーニングのポイントをもう一度挙げておきましょう。
 
(1)訳文を先に読まないで原文の意味をつかむ
(2)一次出力の訳語に惑わされない
(3)修飾語の係り受けに敏感になる
(4)分割した訳文を上手につなぎ合わせる
(5)訳文の語順に注意する
 
少なくともこれらの点に気をつけて編集すれば、適切な訳文を効率的に作れるようになるはずです。
 
「英日翻訳ソフト基礎演習」では、提出課題を添削して、辞書登録の方法(見出し、品詞、活用、訳語)、中間編集の方法(文分割、フレーズ指定、品詞変更、訳語変更)そして後編集(翻訳英文法を適用した効率的な修正)を細かくフィードバックしています。
 
その結果、修了生から以下のようなコメントが上がってきています。
 

  • 翻訳ソフトを導入することで、確実に誤訳が防ぎやすくなると感じている。
  • 辞書登録の練習を繰り返すことで、語句をフレーズ毎に訳出する癖が付いた。
  • 中間編集と後編集で作業を完全に分割して行う練習をしたおかげで、今までのように無駄な推敲を繰り返すことがなくなった。
  • 英文法の再確認ができて大変勉強になった。
  • 翻訳のプロセスを確立することができた。

 
翻訳大学院の受講生は翻訳力がしっかりしているので、使い方のコツさえわかれば短期間に十分に使いこなせるようになっても何の不思議もありません。
 
反対に、翻訳力が無い人が訳文作成の道具として翻訳ソフトを使うと、マイナス面が拡大される恐れがあるので注意が必要です。ただし、学習用のツールと捉えてうまく活用する方法もあります(機会があれば詳しく紹介したいと思います)。
 

用途によって使い分ける

 
翻訳といっても用途によって様々であることはすでに述べました。
 
これらのどの用途でも、作業の中心は「ユーザー辞書登録」です。
 
WEBページを斜め読みするために翻訳スタジオのInternet Explorerアドイン翻訳機能を使う場合、翻訳設定と翻訳メモリを訳文に反映させることができます。ユーザー辞書をしっかり登録しておけば適切な訳文が出力されることが多くなります。
 
また、辞書登録を十分に行えば、簡単な修正のみで訳文を完成させることができます。
これは、「実践トレーニング」で実感されたことと思います。一般的な用途ではこのレベルの翻訳でも十分に役に立ちます。みなさんの中でもまじめにトレーニングした人は、すでにこのレベルの訳文が作れるようになっていることと思います。実は、このレベルで翻訳ソフトを使用するのが最も効果的なのではないかと思っています。恐らく需要が最も多いのではないでしょうか。(例えば企業が翻訳を内部で行う場合など)
 
商品レベルの翻訳に仕上げるにはさらにブラッシュする必要があります。何よりも品質レベルの見極めができるかどうかが問題です。優れた翻訳者であれば要求されたレベルに合わせることができるはずです。ただ、優れた翻訳者はいつの時代でもそれほど多くありません。ですから翻訳支援ソフトを使って生産力をアップする意味があるのです。
 
筆者は、少しでも多くの人が上手に翻訳ソフトを使いこなすことができるようになることを願って、翻訳ソフト講座の課題添削やQ&Aに毎日取り組んでいます。みなさんも翻訳ソフトの正しい使い方をマスターして業務に役立ててください。
 
 
【eTrans Technology】


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一) 

最終更新時間:2009年07月06日 18時12分36秒