<試用レポート3>

「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」 試用レポート 第2回
第1回第3回 バベルMT研究会主宰 小室誠一
http://www.babel.co.jp/mtsg/
mt@buc.babel.co.jp
翻訳ソフトを「下訳作成」に使う場合、対訳エディタの使い勝手は極めて重要なポイントとなります。 今回は「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」の対訳エディタの機能を試してみました。

●使いやすい対訳エディタ

 「翻訳ピカイチ」(PocketTranser)の対訳エディタは操作が大変簡単です。原文を読み込むと自動的にセンテンスが切り出されるので、あとは「翻訳」ボタンをクリックするだけで最後まで一気に翻訳されます。また、文番号の上でクリックすればその文だけ翻訳されますし、文番号をドラッグして複数の文を選択してからマウスボタンを離すと、選択した文番号の文章が翻訳されます。まさに自由自在です。

 出力された訳文が変だと思ったら、「翻訳」メニューから「別解釈」を選択すると、別の訳文の候補が表示されます。その中に適切なものがあれば「採用」ボタンをクリックして訳文を入れ替えることができます。

 訳文を出力してざっと目を通しているうちに、どの単語がどの訳語に対応しているのか知りたくなることがよくあります。そんな時は、原文でも訳文でもどちらでも結構ですので気になる部分をダブルクリックしてください。対応する部分が反転表示されます。さらにクリックすると「訳語リスト」が表示されます。ここで正しいものをダブルクリックすれば訳文に反映させることができます。こうして変更した訳語は「学習辞書」に登録され、次回からはその訳語が優先されます。このようにクリックするだけの作業で訳文の印象がずいぶん良くなります。


●中間編集をしてから後編集

 さて、翻訳ソフトが誤訳をする原因はいくつかありますが、そのほとんどが品詞解析のミスと修飾語句の係り受けの取り違えと言えます。特に、動詞を取り違えたりすると構文の解釈が完全に間違ってしまいます。そのような時は、「品詞変更」を行います。「訳語リスト」の下のほうにある((品詞変更))をクリックして品詞リストが表示されたら正しい品詞をダブルクリックします。すると即座に、指定した品詞で自動的に再翻訳されます。

 修飾語句の場合は、フレーズ指定を使って語句の範囲を特定することができます。またフレーズの品詞を指定して正しく修飾させることもできます。
 長い文章は切りのいいところで文を分割して再翻訳します。分割するところにカーソルを置いて「Enter」キーを押すだけです(ワープロと同じで簡単です)。

 このように、最初に出力された訳文を見て、不適切な部分を対訳エディタの編集機能で修正していくことを「中間編集」と呼んでいます。実は、ユーザ辞書登録も中間編集に含まれるのですが、今回は触れません。

 こうして十分に中間編集して置くと、訳文に直接手を入れて修正する「後編集」が驚くほど楽になります。原文にもよりますが、最初に出力された訳文をいきなり修正すると、労力は初めから翻訳するのとほとんど変わらなくなります。ということは裏を返せば、対訳エディタに上記のような編集機能がついていないものは翻訳作業にはあまり役に立たないということになります。

 「PocketTranser」は対訳エディタの使いやすさに加えて、翻訳スピードが極めて速いので、作業中のストレスをほとんど感じません。


●対訳テキスト・ファイルは立派なデータベース

 対訳エディタ上で訳文を完成させたら、対訳テキスト形式で保存しておきましょう。必要な時にテキストエディタなどで検索することができます。複数のファイルを横断的に検索するgrep検索を使えば立派な対訳コーパスとして役に立ちます。英日の対訳データを日本語から検索して英文を作成する際に参考にするなどといった使い方もできます。

 また、新発売のTranserの最上位ソフト「PC-Transer Platinum 」には強力なデータベース機能が搭載されており、対訳テキスト形式のファイルをインポートして使用することもできます。

 このように、一度作ったものを何度も使い回していくことが生産性の向上につながります。そのような意味でも対訳エディタを活用することが重要です。



<対訳エディタを使ってみる>


[1]英文を読み込んで「翻訳」ボタンをクリックするだけで訳文が出力される。じっくり読むと意味がよくわからないところがある。


[2]「ブッシュ管理」が変なので「管理」をダブルクリックしてみると「administration」が反転表示された。さらにクリックすると訳語リストが開くので、リストの中から「政権」をダブルクリックして訳文に反映させる。


[3]意味の塊をドラッグして反転表示し、「フレーズ」ボタンをクリックしてフレーズ指定する。再度翻訳するとフレーズを優先した訳文が出力される。


[4]フレーズ指定して再度翻訳すると、他の部分に影響が出る場合がある。ここでは、「has」が動詞と解釈され、「政権が持つブッシュが」と意味不明の訳文になってしまった。


[5]hasをトリプルクリックして訳語リストを開き、下の方へスクロールすると((品詞変更))という項目があるのでダブルクリックする。


[6]品詞リストが表示されるので「助動詞」をダブルクリックする。瞬時に再翻訳される。


[7]このようにクリックするだけで随分わかりやすくなる。このレベルまで「中間編集」しておいてから訳文に手を入れることが大切。

次回は、「ユーザ辞書」の機能が実務で使えるか調べてみます。

第3回
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