<試用レポート3>

「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」 試用レポート 第3回
第1回←第2回 バベルMT研究会主宰 小室誠一
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 翻訳ソフトを実務で使いこなす際に最も重要なのはユーザ辞書機能です。
 今回は「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」の辞書機能が果たして使いものになるかどうか調べてみましょう。
●専門辞書とユーザ辞書

 「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」には、約20万語の基本語辞書に加えて、通常は別売りされる専門辞書が最初から付属しています。それも、ジャンルは19分野で約90万語もあり、語数としては十分と思われます。
 ところが、実際に翻訳すると訳出されない語句が出てきます。これだけの語数があってどうしてなのかと思われるかもしれませんが、専門辞書といっても多分に汎用的なのでジャンルが細分化されれば辞書に含まれていない語句が出てきます。また、当然ですが新語にはすぐには対応できません。
 そこで、「ユーザ辞書」を使う必要が出てきます。「機械翻訳は役に立たない」という翻訳者の話をよく聞いてみると、「ユーザ辞書など登録したことがない」という答えがかなりあります。これでは、なかなか思うようにならないのも無理はないでしょう。翻訳ソフトを使いこなすためには、ユーザ辞書の効果的な登録が最も大切なのです。
 1つのユーザ辞書には10万語まで登録できます。専門辞書とユーザ辞書を合わせて4個まで1度に使用でき、優先順位も指定できます。辞書の組み合わせや優先順位は何度か変えて試し、出力文の具合をみてから最終的に決定するといいでしょう。

[図1] 辞書設定画面。基本辞書のほかに、専門辞書とユーザ辞書を合わせて4つまで設定できる。優先順位は右側の矢印ボタンで上下して設定する。

 対訳エディタ(英日)の「登録」ボタンをクリックすると「辞書登録」画面が開きますが、極めてシンプルです。登録項目は、見出し語、訳語、品詞、活用形の4つだけ、品詞は、名詞、動詞、形容詞、副詞です(日英は7品詞)。活用形は自動的に入力され、品詞はプルダウン・メニューから選択するので実際には見出し語と訳語を入力するだけです。簡単なだけに、翻訳作業をしながらどんどん登録して行くには便利です。

[図2]辞書登録画面。品詞によって活用形の部分が変化する。ここでは動詞を選択している。


●辞書ユーティリティの活用

 さて、ユーザ辞書登録は、機能の差はあるもののほとんどの翻訳ソフトについています。ただし、実務で使うためには、登録内容の一覧を出力する機能と外部で作成した辞書を一括で取り込む機能がさらに必要となります。
 翻訳ピカイチには、「辞書ユーティリティ」が付属しています。「一括辞書登録」を使えば一定の書式で作成した辞書ソースを一括でユーザ辞書に登録できます。これがあればクライアントの指定訳語を事前にユーザ辞書に取り込んで訳文に反映させることが楽にできます。さらに「辞書→テキストソース」を使えば辞書登録した内容を書き出して簡単に「対訳語リスト」を作ることができます。納品時に添付すれば喜ばれますし、訳語を修正して元のユーザ辞書に書き戻してやることもできます。

[図3]英日辞書ユーティリティ。ユーザ辞書一括登録や、辞書のテキストソース書き出しができる。

●詳細登録もできる

 「辞書登録」画面からは基本情報しか登録できませんが、テキストエディタなどで辞書ソースを作成すればかなり詳細な辞書登録ができます。この方法だと品詞も、従属接続詞、前置詞、単位が登録できます(英日)。詳細登録は、例えば動詞の場合だと、動詞の後にthat節がつくとか、to不定詞がくるとか18種類ものパターンを登録できます。辞書ソースの記述方法は「ヘルプ」に詳しくでています。それほど難しくないので、興味のある方は是非試してください。とにかくマニアにはたまらない機能です。
[図4]ヘルプの「辞書記述」には、辞書ソースの記述法が詳しく説明されている。例文も出ているのでわかりやすい。

 さて3回に渡って「翻訳ピカイチ バイリンガル Pro」を見てきましたが、実務で必要とされる機能が一通り備わっているのがわかりました。表向きは初心者でも使えるシンプルなつくりになっていますが、実はユーザがカスタマイズできる部分も隠されていて、非常に興味深い翻訳ソフトです。仕事に使うだけではなく、いろいろと自分なりの使い方を工夫する楽しみもあるようです。
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