11. 最終回 翻訳ソフト--こんな時はどうする?

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11. 最終回 翻訳ソフト--こんな時はどうする?

今回はユーザー辞書と翻訳メモリ関連の質問を取り上げてみました。

【質問】

社内の翻訳グループでPC-Transerを複数導入しました。ユーザー辞書として登録可能な社内用語があるのと、過去に翻訳した文書(原文と訳文は対になったwordファイルです)がありますが、これらを有効活用しながら作業を進めたいと考えています。ただ翻訳ソフト自体の導入が初めてで、何から手をつけていいのか分からず躊躇している状態です。特にこれからスタートするにあたり各人が作った辞書などをどのように管理、統合していくのが良いのかが課題となりそうです。
また細かいことですが、当社では完成訳をWordファイルなどで管理保存していますが、PC-Transer独自形式のファイル?も一緒に保存しておくべきでしょうか?
マニュアルを一読しましたが、個々の機能説明中心のためよく理解できませんでした。このような漠然とした質問となり恐縮ですが、アドバイスいただけると幸いでございます。

【回答】

たいへん良い質問です。翻訳ソフトを導入する際に直面する問題がほとんど含まれています。

質問を整理してみましょう。

  • (1)ユーザー辞書として登録可能な社内用語がある
  • (2)過去に翻訳した文書(原文と訳文は対になったwordファイルです)がある
  • (3)各人が作った辞書などをどのように管理、統合していくのが良いのか
  • (4)PC-Transer独自形式のファイル?も一緒に保存しておくべきか

これまでの連載記事とダブるところがあるかもしれませんが、順番に見て行きます。

(1)ユーザー辞書として登録可能な社内用語がある

すでに対訳の用語集ファイルがあるというのは、翻訳ソフトを使う場合にたいへん有利です。迷わずユーザー辞書の「一括登録」をしましょう。

一括登録するにはソースファイルを作成する必要があります。

原語と訳語をカンマで区切る「CSVフォーマット」とタブで区切るTSVフォーマット」は、Excelなどの表計算ソフトを使えば簡単に作成できる一番簡単な辞書ソースで形式ですが、すべて「名詞」として登録されてしまいます。

それでは名詞以外の一括登録ができないのかと言うと、そんなことはありません。翻訳スタジオの辞書機能の素晴らしいところは、詳細情報を辞書ソースに記述できることです。たとえば英日辞書の場合、以下の例のように見出し語と訳語の間に「(n,*):」を挿入すれば、名詞で規則活用するということになり、「(v,*):」を挿入すれば、動詞で規則活用することになります。さらに「(a):」は形容詞、「(adv):」は副詞を表します。

  • agent(n,*):代理人
  • alienate(v,*):譲渡する
  • ambulatory(a):撤回可能な
  • as soon as practicable(adv):実行可能な限り速やかに

このようにして品詞情報を書き込んだファイルは拡張子を「.opt」にして保存します。(日英の場合は書式が異なります。マニュアルをご覧ください)。

一括登録は、メニューバーの「翻訳辞書」→「一括登録」で入力ファイルと出力ファイルを選択して登録します。このとき、新規の辞書を作るか、既存の辞書に追加するか選択できます。新しい名前を付ければ新規の辞書になります。

(2)過去に翻訳した文書(原文と訳文は対になったwordファイルです)がある

これも翻訳メモリに登録すれば十分活用できます。ただし、対訳ソースファイルはテキスト形式にする必要があるので、Wordファイルを「書式なし(*.txt)」で保存し直してください。
原文と訳文が対になっているということですので、原文と訳文の間にタブを一つ入れるだけでソースファイルができあがります。

もし、原文と訳文が別々のファイルの場合は、メニューの「ツール」→「スクリプト」の「原文訳文読み込み」を行って、翻訳エディタ上で対訳にすると良いでしょう。

翻訳メモリ形式に変換するには、メニューバーの「翻訳メモリ」→「インポート」でインポート元とインポート先のファイルを指定してインポートします。この場合もインポート先に新しいファイル名を入力して新規メモリを作成することも、既存のメモリファイルを指定して追加することもできます。

(3)各人が作った辞書などをどのように管理、統合していくのが良いのか

辞書の一括登録機能では、入力ファイルを複数選択して一つの辞書に登録することができます。統合用の辞書を一つ作成し、各人の辞書を一度に選択して登録します。同じ見出しで訳語が複数になってもそのまま訳語を追加します。登録が完了したらその辞書を、メニューバーの「翻訳辞書」→「ユーザー辞書ブラウザ」で一覧表示して辞書の編集を行います。
複数の訳語がある場合も見出し語一つにつき一つの訳語で表示されるので不要なものを簡単に削除できます。チェックが完了した辞書を「参照用の基本社内用語集」とします。

「参照用の基本社内用語集」は「読込辞書」に設定して管理者以外は手を加えないようにします。個々の翻訳時に追加・変更する語句は、それぞれ新規に作成した辞書を「書込辞書」に設定して登録します。

辞書の優先順位は以下のようにします。

  1. 新規ユーザー辞書(書込辞書)
  2. 参照用の基本社内用語集(読込辞書)
  3. 専門用語辞書
  4. 基本語辞書

基本的に辞書は小さく作って組み合わせて使うものです。複数の辞書に同じ見出しが登録されていても優先順位を変えれば訳し分けができます。辞書の色分け機能を使えば、どの辞書が有効かが視覚的に分かるので、辞書の「調合」が簡単にできます。

(4)PC-Transer独自形式のファイル?も一緒に保存しておくべきか

PC-Transer独自形式の翻訳ファイル(英日は「*.edh」日英は「.*jdh」)はマスターファイルとして必ず保存しておきましょう。このファイルには対訳だけではなく、翻訳時に使用した辞書などの設定情報も含まれています。

また、このファイルだけあれば、必要に応じて原文ファイル、訳文ファイル、テキスト形式の対訳ファイルを書き出すことができます。それぞれ別々のファイルにするより管理が楽です。

この他に、そのとき使ったユーザー辞書のソースファイルも一緒に保存しておくとよいでしょう。メニューバーの「翻訳辞書」→「辞書ソース出力」でテキストファイルに書き出せばファイルサイズも小さくなり、Wordやテキストエディタで開くこともできます。

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確かに以上のようなことはマニュアルをじっくり読めばすべて解決できることですが、実際に作業しようとすると、どこから始めればよいかよくわからないというのが実情でしょう。どちらにしても、辞書と翻訳メモリの登録を最初に行う必要があるのは間違いないようです。


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一)

最終更新時間:2008年04月01日 18時21分08秒