5. 「原文訳文読み込み」で迅速に対訳ファイルを作成

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5.「原文訳文読み込み」で迅速に対訳ファイルを作成

最近は「翻訳メモリ」に対する関心が高まっています。原文と訳文を対にしてデータベースに蓄積し、再利用しようとするもので、専用のソフトウエアもあります。

PC-Transerも、バージョン6から本格的な翻訳メモリ機能を搭載しました。今回は、翻訳メモリ機能を活用するために必要不可欠な「対訳ファイル」の効率の良い作り方を検討してみましょう。


原文と訳文の電子ファイルが手元にある場合、とにかく対訳ファイルにすることをお勧めします。実際の翻訳作業では、センテンスレベルでの対訳が参照できれば効率がアップすることは間違いありません。自動的に完全マッチ文を検索して訳文を取り込むところまでいかなくても、テキスト・エディタなどで検索して参照するだけでも大いに助かります。

翻訳スタジオ2007には対訳ファイルを作成するのに便利な「原文訳文読み込み」機能があります。筆者は、この機能を使って何百という対訳ファイルを作成しましたが、実際にこの機能を使っている人はどれくらいいるでしょうか。

翻訳メモリ専用のソフトウエアには、原文と訳文を対応付けるアラインメント・ツールが付属していますが、誤った対応付けを訂正するのに手間がかかり、直接訳文を修正できないのが難点です。

翻訳というのは、読みやすさを追求するためにセンテンスを分割したり、連結したりします。ですから、対訳を作成するには臨機応変に訳文に修正を加える必要があります。また、対訳にしていくと、細かい訳抜けが見つかることもよくあります。これらに対処するには「原文訳文読み込み」で対訳エディタに読み込んで修正を加えていく翻訳スタジオ2007を使用した方法が最も効率的だと思われます。

●「原文訳文読み込み」の実行

それでは基本的な手順を見てみましょう。

(1)翻訳エディタを開く

(2)メニューの「ツール」→「スクリプト」をクリック

(3)スクリプトの選択画面が表示されるので、リストの下向きボタンをクリック

(4)リストの中かから「原文訳文読み込み」を選び「実行」ボタンをクリック

(5)「原文ファイルを指定」画面が開くのでファイルを選んで「開く」をクリック

(6)「訳文ファイルを指定」画面が開くのでファイルを選んで「開く」をクリック

(7)原文が左側に、訳文が右側に読み込まれる

原文ファイルと訳文ファイルがぴったりと合っている場合は、これだけで対訳ファイルができることになりますが、現実はそれほど甘くありません。
原文と訳文が途中で食い違ってしまうのが普通です。修正作業はつきものですが、使い慣れた対訳エディタで行いますので抵抗はありません。誤訳や訳抜けが見つかっても、通常の翻訳時と同じように作業すれば良いので、慌てることもないでしょう。

●対訳の修正方法

対訳の食い違いを修正するには、「片側改行挿入」機能を使います。

行を挿入したり文を分割したりするときには「Enter」キーを押しますが、これでは左右のセルに同時に改行が挿入されてしまいますので、いつまでたっても食い違いを訂正できません。

「片側改行挿入」を使えば、カーソルを置いたセルにだけ改行が挿入されますので、食い違った行を合わせることができます。

例えば、以下のように原文と訳文がずれている場合、訳文の★のところにカーソルを置いて、

「編集」→「片側改行挿入」をクリックするか、

「Shift」+「Enter」キーを押します。

以下のように、右側のセルの行だけが分割されて対応が取れました。

あとは、この作業を繰り返して行きます。

一見面倒に思われるかも知れません。自動的に全部やってくれれば楽なのに、と思うかもしれませんが、せっかく対訳ファイルを作成するのですから、機械的に作るのではなく、しっかりチェックを入れて、信頼性の高いものを作りましょう。特に専門の翻訳者が真剣に作成した対訳ファイルなら間違いなく役に立ちます。

●対訳ファイルの利用方法

作業が終わったら、とりあえず「翻訳ファイル(*.edh)」形式で保存しておきましょう。翻訳スタジオ2007の翻訳メモリとして利用する場合は、そのままのファイル形式でインポートできます。

また、テキスト・エディタなどで検索するには、「対訳ファイル(*.txt *.out)」形式で保存すると良いでしょう。

以下のような上下対訳になります。テキスト・エディタのGREP(グローバル)検索を活用すれば実用レベルで使えます。また、検索置換でどのような形にも整形できますので最も利用価値が高い形式だといえます。

  • ちなみにこの例文は、内閣官房の「法令データ集」からのものです。

「日本法令英訳プロジェクト」(http://www.kl.i.is.nagoya-u.ac.jp/told/)でテキスト・ファイルが手に入ります。対訳ファイル作成の練習に最適です。

さて、いかがでしょうか。これまで翻訳したファイルがたくさんある人は、暇を見つけては対訳形式にして蓄積して行きましょう。手元にファイルがない人もWEB上には貴重なデータが無数にありますので検索エンジンで探してみてください。
翻訳スタジオ2007の対訳作成機能は一見地味ですが、シンプルなだけに慣れれば大変使いやすいツールとなります。みなさんも大いに活用して翻訳資産をどんどん増やしましょう。


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一)

最終更新時間:2007年11月30日 10時13分48秒