8. 中間編集のススメ

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8. 中間編集のススメ

翻訳ソフトは、原文が曖昧だったり複雑だったりした場合、間違った訳文を出力することがよくあるのはご存知の通りです。ただ、間違いの傾向が一定しているので、慣れるとどこをどう直せばよいかわかります。それでも、少しでも適切な訳文を直したほうが作業がはかどるのは言うまでもありません。

そこで、翻訳エディタの編集機能を使って、できるだけ直しやすい文章に整える作業を行うことになりますが、筆者はこれを「中間編集」と呼んでいます。「中間編集」をすれば、翻訳ソフトの出力文を誤解の少ない直訳文に整えることができます。

PC-Transerには、中間編集に役立つ機能がほとんどすべて備わっています。しかも、それぞれの機能の操作性が良いので、ストレスなく編集ができます。みなさんも中間編集のテクニックを身につけて、翻訳ソフト達人の道へ踏み出しましょう。

●中間編集とは

昔は、前編集(プリエディット)と後編集(ポストエディット)を重視し、それぞれのスペシャリストが業務分担するような作業フローが一般的でした。

現在の翻訳ソフトは、力のある翻訳者がすべての工程をシームレスに行うことで最大の効果が得られるようになっています。その中心になるテクニックが「中間編集」です。

ここで筆者の提唱する「中間編集」を定義しておきましょう。

翻訳ソフトの一次出力文を見て不適切な部分がある時、翻訳エディタの編集機能
(辞書登録、訳語学習、品詞変更、フレーズ指定など)を使って訂正すること。
このとき訳文を直接修正してはならない。

つまり、一次出力が良ければすぐに後編集(リライト)に進んで差し支えないということです。「訳文を直接修正してはならない」理由は、訳文の再現性を保つためです。後編集がうまくいかない場合、もう一度「翻訳」ボタンをクリックすれば、中間編集された訳文にリセットできるので安心してリライトできます。また、訳文を直接修正する作業は「後編集(リライト)」としてはっきり区別するのがコツです。

●中間編集の基本テクニック

「中間編集」では以下のような機能を主に使用します。

(1)辞書登録

 事前に十分登録したつもりでも、訳文を出力してみると、さらに適切な訳語に修正したくなることがあります。また、詳細登録することで、より文脈に合った辞書を作成することもできます。
(「翻訳辞書」メニュー)

(2)フレーズ指定

 フレーズとなる範囲を選択して「フレーズ指定」ボタンをクリックするだけで指定できます。さらにメニューからフレーズの品詞(フレーズ種別)を指定することもできます。「後置形容詞句」が威力を発揮します。
(「フレーズ/語」メニュー)

(3)文分割

 複雑な文は、全体を破綻なく訳出することが困難な場合があります。そんな時でもあきらめずに、文を意味のかたまりごとに細かく分割して訳すことで、リライトに使える訳文のパーツを作ることができます。操作は、ワープロと同じで、分割したいところにカーソルを置いて「Enter」キーを押すだけです。

(4)品詞変更

 変更する語句をダブルクリックして訳語対応を行い、訳語ペインの「品詞」リストから変更する品詞を選びます。変更すると自動的に再翻訳されます。
(「フレーズ/語」メニュー)

(5)訳語変更

 訳語を変更する場合は、ユーザー辞書登録で処理するのが基本ですが、最終的な微調整として訳語変更機能を使っても良いでしょう。品詞変更と同じ手順で訳語リストから適切なものを選択するか、変更したい語句をトリプルクリックして訳語リストを表示し、その中から選択することもできます。
(「フレーズ/語」メニュー)

このように、PC-Transerの編集機能を使えば、(1)の辞書登録以外は、マウスをクリックしたり、「Enter」キーを押したりするだけで訳文を整えることができます。

ここで注意したいのは編集の順番です。基本的に上記の順に行うのが良いでしょう。
ただし、(2)フレーズ指定と(3)文分割が入れ替わることがあります。

ここでフレーズ指定の例を見てみましょう。

【原文】

「That is why she always asks experts on subjects with which she is not familiar.」

【一次出力】

「そういうわけで、彼女は常に、彼女がよく知られていない主題の専門家に尋ねる。」

★on subjects〜がexpertsを修飾していると解釈されています。

【フレーズ指定】

「on subjects with which she is not familiar」をフレーズ指定することで直前の名詞に係る後置形容詞用法ではなく、askに係る副詞用法に変更してみます。

【再翻訳】

「そういうわけで、彼女は彼女がよく知られていない主題に関して常に専門家に尋ねる。」

このように文の骨格が正しく訳されていれば、言葉使いを修正するだけで済みます。ほんの一手間かけるだけで、その後の作業がずっとやり易くなるのです。

とは言うものの、実際に翻訳作業に入るとなかなかじっくりと中間編集していられなくなることもあります。そのような時は、辞書の追加登録と文分割だけでも十分切り抜けられます。


記事の内容は筆者自身のノウハウに基づいております。記事の内容によって万一損害を被ることがあっても一切責任を負いません。また、この記事の内容に関して発売元の株式会社クロスランゲージへの問い合わせはご遠慮ください。(小室誠一)

最終更新時間:2007年12月27日 12時57分34秒