Legal Transer試用レポート

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Legal Transer試用レポート

2007年10月5日に発売された「Legal Transer」の使い勝手を試して見ました。

契約書はパターン化しているので、一度パターンを覚えれば翻訳はそれほど難しくないとよく言われます。確かに人間の目で文章全体を見ればパターン化しているかも知れませんが、構文が複雑で細かいところで言葉使いが一定していないため、汎用的な翻訳ソフトではなかなかうまく処理できません。契約書をそのまま訳すと出力にかなり時間がかかり、下手をすれば訳出できないこともあります。そのような時は、手動で文を分割してから再度翻訳する必要がありますが、かなり手間がかかります。おそらく、これまでPC-Transerを利用してこられた方も、そのように感じていたことと思います。もっとも、他社の翻訳ソフトでも同じことで、ずば抜けて契約書に強いものは見当たりません。

Legal Transer製品紹介ページ

http://www.crosslanguage.co.jp/products/legal2008/

●原文前処理機能

今回、Legal Transerを試用してまず驚いたことは、契約書にもかかわらず、翻訳スピードが速いことです。同じ文章を他のソフトで翻訳して見ると違いは歴然としています。
翻訳ソフトを使う者にとって、これだけでも素晴らしいことですが、訳文の作りもかなり良くなっています。これまで手作業で行っていた前編集を自動でやってくれるので、スムーズに一次出力が得られるのです。

ここでちょっと出力サンプルを見てみましょう。
たまたま手元にあった契約書のコーパスからREAL ESTATE PURCHASE AGREEMENTを「翻訳」してみました。

【原文】
Seller shall furnish to Purchaser written notice of any such proceedings within forty-eight (48) hours after Seller receives notice thereof.

【PC-Transer 翻訳スタジオ2008】
売主がその通知を受け取ったあと、売主は48の(48)時間以内でそのような訴訟の書面通知を買主に与えるものとする。

【Legal Transer 2008】
売主がその通知を受けたあと、売主は48時間以内にそのような手続の書面通知を買主に与えるものとする。

翻訳スタジオもなかなか良くできていますが、Legal Transerはいかにも契約書の文体になっています。

●契約書基本語辞書と定義語

自動前編集で、複雑な構文に対応できているだけでなく、基本語辞書自体がリーガル用にカスタマイズされているので、まったく的はずれな訳語が出力されることは少なくなっています。もちろんじっくり見れば不適切な訳語が散見されますが、ユーザー辞書登録で対処できますのでそれほど問題とはなりません。

Legal Transerではユーザー辞書の他に、「定義語」辞書という選択肢が増えました。従来、辞書の優先順位は「学習辞書」が最も高く、いくらユーザー辞書に登録していても、うっかり訳語変更をして「学習」してしまうと、ユーザー辞書の訳語が反映できないことがありました。

「定義語」機能を使うと、その文書のみに有効な最優先訳語を指定できます。会社名、人名、製品名などの固有名詞を登録すれば訳語の統一がしっかりできます。

さらに、この「定義語」機能には、自動的に単語を抽出する機能も付いています。単語の出現頻度に基づいて抽出するようですが、見出し語が一覧表示されてすぐに訳語を入力できるので便利です。

「定義語」画面で「単語抽出」を行い、訳語を付ける。

●翻訳メモリ機能

複雑で長い文章の場合、翻訳メモリ(対訳データベース)に100パーセントマッチすることはほとんど期待できません。今までは、ここであきらめていたのではないでしょうか。確かに機械的に翻訳メモリの訳文に置き換えることは困難ですが、翻訳メモリペイン(対訳データベースの検索画面)で翻訳メモリを高速で検索すれば、用例集として十分に活用できます。その場合、マッチ率を低くしてもセンテンスをまるごと検索したのではあまりヒットしません。それよりも、調べたい語句を選択して、「キーワード検索」することをお勧めします。

リーガル文書はパターン化していて定訳があるので、翻訳メモリの利用には最適です。また、Legal Transer 2008には「内閣官房法令対訳データ」が最初から収録されているので、すぐに活用できます。

リーガル翻訳では英訳をすることも多いはずです。実はそのような時に一番役立つのが対訳用例集です。蓄積した翻訳メモリを検索して参考にすれば、リーガル・ドラフティングもかなり楽になります。


Legal Transerのようなリーガル翻訳に役立つ優れた翻訳ソフトが発売されたことで、これまで機械翻訳に見向きもしなかった人も興味を示すのは間違いないでしょう。ただ、「翻訳ソフト初心者」は、とかく一次出力の訳文だけを見て使えるかどうか判断する傾向があるので注意が必要です。

今や翻訳ソフトは、翻訳エンジンを核としながらも、対訳エディタや翻訳メモリなどの機能を搭載した総合的な「翻訳支援ツール」となっています。それぞれの機能を十分に使いこなすことで大きなメリットが得られるのです。これまで「PC-Transer 翻訳スタジオ活用法」に連載してきたような活用法を取り入れて作業すれば、リーガル翻訳分野でも効率化が図れるはずです。

最終更新時間:2007年12月06日 15時24分53秒